THE NORTH ISLAND

welcom to nature of hokkaidou


雪虫と初雪

雪虫(ゆきむし)が舞うと近いうちに初雪が降る!そもそも雪虫とは?


空を飛び交う無数の白い物体「雪虫」アブラムシの一種ですが、服や顔にくっつくため、厄介な存在です。雪が降る前に飛ぶため、北国では冬の到来を告げる風物詩にもなっています。青森や秋田など東北では稀にしか見かけませんが、毎年大量発生する北海道では、雪虫を見かけた1週間以内に初雪が降るとは僕が子供のころからよく言われていました。雪虫は晩秋になると、トドマツの根から出てきてヤチダモの木へ移動するため、初雪の時期と重なるのでこう言われてきたのだと思います。


ちなみに、雪虫とはアブラムシ科の中で白蠟物質を分泌して体全体が白い綿で包まれたようになる昆虫(ワタムシ)の総称です。日本ではトドノネオオワタムシやリンゴワタムシが有名で、北海道の他に、東北地方はもちろん、岐阜県以北の本州でも見られるところがあるそうです。海外では、トドノネオオワタムシはロシアの一部や朝鮮半島にも分布しているし、リンゴワタムシに至っては苗木に付いて世界中に拡散している害虫で、北アメリカやヨーロッパ各地、さらに南アジアやアフリカや中南米の一部でもみられるようです。


この雪虫が舞うと北海道のサーファーは冬の訪れを感じ、西高東低の気圧配置がキマッタときの日本海の波を思い起こしワクワクします。また北海道のスノーボーダーにとっても、待ちに待ったスノーシーズンが近いことを感じ、早く雪が降らないかと念じます。そんなことから、この雪虫は北海道サーファーや、スノーボーダーにとっても、ちょっと特別な存在ですが、この虫を雪虫とよぶのは北海道だけのようです。


This is an advertisement


■ 雪虫が舞うとどのくらいで初雪が降る?ウェザーニューズが調べました。

雪虫発生から初雪までは当然ですが、バラツキがあります。では平均すると一体何後に雪は降るのでしょう? これを、(株)ウェザーニューズが調査し、結果を発表したものがあります。それによると平均しておおよそ21日後という結果になりました。僕達が子供のころから聞いていた感覚では1週間~2週間後という感じですが、低気圧や前線の通過が不定期なため年によってバラツク傾向があるようです。また、網走・帯広・根室・釧路の道東4都市の平均は26日で、他のエリアよりも長いという特徴がありました。


調査方法は、利用者が雪虫を発見したら携帯電話のカメラでそれを撮影、見つけた場所と数をリポートします。それらの報告を参考に雪虫発生日から初雪までの期間を調べ、過去の調査結果と比較検証するというものです。2007年以降調査しているのは、札幌市・旭川市・函館市など道内主要8都市です。ウェザーニューズによると、どの都市も、俗説より一週間以上遅くなっているのは、平均気温上昇等の環境の変化が影響しているのでは?と推測しています。


ちなみに観測8都市の2007年~2011年までの5年間の平均の日数は以下の通りです。

・札幌市  18日後

・旭川市  11日後

・函館市  19日後

・苫小牧市 19日後

・網走市  25日後

・根室市  27日後

・釧路市  27日後

・帯広市  23日後


This is an advertisement



This is an advertisement


■ 雪虫のオスには口が無い!?しかも寿命は1週間!

ちょっとヤヤコシイ内容ですので、しっかり着いて来て下さいね。雪虫のメスは春にはヤチダモ類の葉裏で生活し、5月上旬頃に成熟した基母が単為生殖(メスだけで卵を生める)により、また多数のメスを生みます。またそのメスも早熟多産で、次々に単為生殖を重ね、生まれた子虫は、数日間の蛹後、翅を持った成虫になり(これが第二世代)、この第二世代が7月頃にトドマツに移動し、卵を産み、夏の間はこのトドマツの根(トドノネ)で、アリと共に生活しながら、第三世代の子虫=メスを産卵します。このトドマツで育った成虫が綿をつけて舞い上がったのが雪虫になります。


そしてこのメスが、再びトドマツの木からヤチダモの木に移り(この飛ぶ様を雪虫と呼んでいる)緑色と、オレンジ色の子虫を生むのですが、ここでの緑色の子虫が初めてのオスとなります。そうして、この緑のオスの子虫は餌や水分を取る口も持たないで、寿命はたった1週間ほどと言われています。その間にメスがこのオスと交尾し、越冬できる卵を残し死亡し、一年のサイクルを終えます。つまり雪虫のオスは越冬する卵を産ませるためだけに存在するといった感じです。


雪虫

■ 2019年は例年の10万倍の大量発生

2019年秋、札幌など各地で視界を防ぐほどの雪虫が大量発生し、「これでは外出できない」と悲鳴があがるほどでした。その数は「平年の10万倍」と専門家は見積もりました。なぜ2019年は「雪虫」が大量発生したのでしょうか。雪虫と呼ばれるケヤキフシアブラムシが大量発生したのは、北海道で8月、9月の気温が高めに推移したためと思われます。アブラムシの仲間は、春から秋にかけてメスだけで単為生殖を繰り返します。このため気温が高いと春から秋までの世代数が増え、個体数も爆発的に増えます。気温が高いと発育が速く進み、1世代にかかる時間が短くなるからです。


2019年の北海道は、5月26日に観測史上初となる39.5℃を記録するなど厳しい暑さとなり、その後も秋にかけて全道的に高温傾向が続きました。それが「雪虫」の大量発生をもたらしたと考えられます。気になる今年2020は秋の残暑はありましたが、2019年ほどではなく、春も低めの気温が推移したため大量発生は無いようです。(2020/10/22現在)大量に吸い込んだり肌に着いたりするとアレルギーの報告もあるようなので、ちょっと安心しました。


■ 雪虫についてのまとめ

道民の間ではほぼ常識的に話されている「雪虫が舞うと近いうちに初雪が降る。」というのは晩秋になると、トドマツの根から出てきてヤチダモの木へ移動するため、初雪の時期と重なるという事で、感覚的なものや、都市伝説ではないことが分かりました。僕の感覚では1週間位で初雪が降ったように思っていましたが、実際にはもう少し間隔があったようです。またオスは越冬する卵を産ませるためだけに生まれてきて、寿命は約1週間で餌を食べる口も無いというのは、ちょっと衝撃的でした。


また、メスは単為生殖(メスだけで卵を生める)ため、年内は何世代かにわたり鼠算式に増えてゆきます。秋に残暑が続くときは例年より1世代多く生まれたりすると2019年のような大量発生となります。ニュースで覚えているのは雪虫の死骸が屋根に数センチ積もったなんてのもありましたが、例年の10万倍の大量発生が起きればこうなるのかなと思いました。ということで、今回は北国の秋の風物詩、雪虫についてのお話でした。


This is an advertisement